美術史と美術館を丸ごと学ぶ美術史美術館コースでは、美術の歴史をたどる「美術史」と、美術と社会の接点としての「美術館」「文化遺産」の双方について初歩から学び、知識を深め感性を磨いて社会に出ることをめざします。
 また、専門知識のあかしとしての学芸員資格取得を支援しています。
 知識としての美術史にとどまらず、単なる美術館通でもない、「生きた美術史」を学びます。

文学部内の位置づけ:文学部で美術史を系統的に学べるのは、このコースだけ

‣ 美術史を系統的に学べるカリキュラムがあるのは、文学部でこのコースだけです。このコースでは美術史の専門家から系統的に学ぶことで、美術史・美術館の学びを職業選択に生かすことができます。大学院で引き続き美術史を学び、専門的職業人を目指す道があるのも、このコースだけです。

‣「学びのパスポート」プログラムにはミュージアムを取り上げる科目がありますが、この科目は「美術史」ではありません。社会科学系の内容ですのでご注意ください。このプログラムから美術史美術館コースで学ぶことはできず、学芸員資格課程とのリンクもありません。大学院も未設置です。

‣ よく比較されるMARCHにおいても、美術史と美術館について専門的に学べるカリキュラムを持つところは、このコース以外にひとつだけです。

学ぶ内容

美術史だけじゃない。美術館だけでもない。その両方を同時に学ぶ、ありそうでなかったコース

‣美術史は、美術館にとってのコンテンツ(中身)です。いっぽう美術館は、美術史にとってのパッケージ(箱)です。パッケージはコンテンツがなければ空箱ですが、コンテンツはパッケージがなければ私たちに届きません。このふたつは、切り離せないものなのです。どちらかだけを学ぶより両方学んだ方が、手応えがありそうですね。

‣ところがこれまでほとんどの大学では、コンテンツとパッケージを別々に教えられてきました。しかし美術史を学ぶなら、その舞台である美術館を深く知ることで、美術史がずっと身近になります。また美術館について詳しいのに、その中身である美術史を知らない・学ばないのももったいない話ですね。

‣一方このコースは、それぞれ美術史と美術館の歴史についての専門的な研究を行っている2名の専任教員で運営されています。カリキュラムは、美術史と美術館についての学びを車の両輪として進んでいきます。

‣このコースでは、中身だけを学んで知識のままに終わらせるのではなく、また箱だけを学んで中身を知らないままでもなく、コンテンツとパッケージをバランスよく学んでいきます。

定番の「美術史」から、アートの海の探検へ:建築、デザイン、工芸、写真、モード、etc, etc...

‣美術史は1点1点を「名作」として鑑賞するのではなく、その作品が他の作品とどう違うのか、その違いがどこから生まれるのか(それは美術家の個性とは限りません)、ということを考察してきた学問です。それを支えている、作品を「観察する」技法を実践的に身につけます。これは、本を読んでも身につけることはできません。大学でしか学べない技法です。

‣その上で、美術史学のゆたかな研究の世界に触れ、自分の関心と知識を深めます。こうした美術史の方法と知識をふまえて、美術に限らない「かたちの文化」の豊かな世界を探ります。

‣西洋の「巨匠」の「名作」を知ることが美術史の学びのすべてだった時代は、もう過去のものです。このことは、メトロポリタン美術館が公開している「美術史のタイムライン」を見れば一目瞭然です。ここに並んでいるのは、テーブル、楽器、皿、写真、タイル、装身具、土器、仮面、仏像、ドレス…世界各地の多種多様な産物です(表示される「作品」は、アクセスのたびにシャッフルされます)。よく知られた西洋の巨匠たちの作品は、ちらほらとしか見当たりません。これが、グローバル化時代の美術史の姿なのです。それは、一本線の歴史を覚えることから、かたちの無限の連鎖へと変身の途上にあるのです。そして西洋の巨匠たちの作品も、従来の美術史の指定席ではなく、世界各地で生まれた「かたち」の横に置き直されることで、新鮮さを取り戻すかもしれません。美美コースでは、美術史のこうした変容をみすえつつ学んでいきます。

‣美美コースの教育内容は、建築、都市景観、工芸、デザイン、ポスター、モード(ファッション)、写真など、広く「かたち」を作り出す文化です。詳しくは下の「授業科目の内容」をご覧ください。

美術館都市・東京で学ぶ──東京圏約200館の美術館パノラマが、もうひとつのキャンパスです。

‣東京は、世界に名だたる美術館の宝庫です。このコースでは、国立・都立・私立の大美術館から地域に密着した公立館、知る人ぞ知る小さな宝石のような美術館まで、さまざまなミュージアムを訪ねます。ひとつひとつの美術館が、それぞれの分野でのフロント・ランナーであることを理解します。

‣美術館という施設にはさまざまな種類があり、活動の内容もいろいろです。美術と社会をつなぐ接点としての美術館がどのような役割を果たし、いまどんな課題に直面しているのか、といったことを教室と現場で知り、感じ、考えます。

‣美術館の今を語るには、その過去を知る必要があります。美術館がどんな歩みをたどって誕生したのか、文化財を大切にする考え方は、どのように成長したのか。これらを知ることで、美術館や文化財を深く見ることができるようになります。この分野を専門とする専任教員が、本格的に教授します。

‣単に見学するだけではなく、第一線で活躍する現場の専門家から解説を聞くほか、現役学芸員によるセミナー形式の授業もあります。「来館者」とはちがう側から美術館を見ることは、とても新鮮な経験です。その先に、ミュージアムをめぐる世界で役割を果たす将来のあなたの姿が見えてくるかもしれません。

ライセンスを手に、社会へ

‣学芸員資格は、学芸員を目指す以外にも、大学で美術史・美術館について専門的に学んだ証明として役立てることができます。美美コースのカリキュラムは学芸員資格課程と一部リンクされており、学修内容と併せて他の専攻に比べて負担が軽くなっています。なお資格課程は必修ではなく、希望者のみの履修です。資格課程を履修しなくても、卒業には支障ありません。くわしくは、「学芸員資格」のページをご覧ください。

そしてフランス語を身につける・フランスを学ぶ

‣もちろん、同じ専攻内の語学文学文化コースの授業を履修してフランス語の修得も並行してめざすことができます。文学等を学んで視野を広げることもできます。モノトーンな学びではありません。

‣西洋美術史の研究は、ここ日本でもさかんに行われています。そこから生まれる豊かな出版物がありますから、日本語の文献を用いて十分深く学ぶことができます。

学ぶ意味

‣美術史:人気の展覧会が数十万人の観客を集めているのを見ても分かるように、美術に触れ、深く知りたいという願いは社会にしっかり根づいています。しかし、描く側の視点や好き嫌いの視点とは別に、美術の流れや社会とのつながりという美術史の観点を知ることで、これまで興味が向かなかった作品に目を開かれ、自分で考え発見することの面白さを知ることができます。こうして美術という豊かな分野を深く、積極的に楽しめるようになると、日常生活から旅先まで、美術との触れ合いがいっそう充実したものになります。また美術作品について趣味的にではなく客観的に語る能力を身につけることは、コミュニケーションの技法としても間違いなく有益です。

‣美術館:現代の美術館は作品を展示して観客をただ待つのではなく、積極的に社会に働きかけようとさまざまな努力をはらい、知恵を絞っています。その成果は建築や施設から各種の催しまでいろいろな形で現れており、それらを知ることで美術館訪問が格段に楽しくなります。そして美術館を知ることは、社会にとって、そして私たちが生きていく上で美術(art)とはなんなのか、どんな意味があるのかということも考えさせますから、結局はあなたの人生を充実させるために何が必要かを見つめさせることになるでしょう。

‣学芸員資格課程:学芸員(キュレーター)は、美術と社会をつなぐ仲立ちの役割を果たす専門家です。どの分野の専門家もそうであるように、学芸員は好き嫌いを超えた客観的で広い視野から美術を見ることができなければなりません。その専門家になる資格をもつということは、一般の社会でもさまざまに生かすことができます。詳しくは「学芸員資格」のページをご覧ください。

見ることを学ぶ

‣学ぶ意味について、もう少し補足しましょう。下の写真は、ルーヴル美術館で学ぶ若者たちの様子を撮影したものです。観察しているのは、17世紀のフランス古典主義絵画を代表する画家ニコラ・プッサン(Nicolas Poussin 1594-1665)の作品です。日本では「美術を学ぶ」というと制作を学ぶことを意味しますが、欧米では「作品を見ること」を早くから学びます。それは単に与えられた解説の通りに作品を受け取ることではなく、自分の目で作品に何かを発見する方法を学ぶことです。「見る」とは本来、そうした能動性を秘めた能力なのです。

ルーヴル美術館にて

‣しかし、ただ目を向けただけではその能動性は発揮されません。そこに、「見かた」を学ぶ必要性があります。「見ること」を学ぶことで、今まで「見えていたのに見ていなかったもの」が次々と作品の中に見つかることでしょう。そしてその体験はあなたの思考を活気づけ、次の作品へと向かわせるはずです。そうなったらしめたもの。美術史美術館コースで、そんなワクワクする体験をしてほしいと思います。あなたはきっと、その体験を今度は他の誰かに伝えたいと思うことでしょう。そこに、あなた自身の将来像が見えてくるかもしれません。

一例をあげて、ご一緒に観察してみましょう。

‣新古典主義美術を取り上げましょう。「新古典主義 Neo-classicism」とは、古代ギリシア・ローマの美術にならって美術史に画期をもたらしたルネサンス時代の古典主義の再来、という意味です。だいたい18世紀半ば過ぎに生まれ、19世紀半ばまで生きながらえたヨーロッパ美術のスタイルです。
‣新古典主義美術が、古代ギリシア・ローマの美術をひとつの模範としていたことは確かです。それによって、新古典主義の彫刻を代表するカノーヴァのように、静穏で洗練された作品が生み出されました。新古典主義の画家たちもまた、古代の著名な彫刻作品を画中に取り込むなどしていました。
‣しかし、新古典主義絵画には、それだけでは説明がつかない側面がいろいろあります。たとえば、アングルが描いた《ドーソンヴィル伯爵夫人》(1845年)を見てみましょう。とてもチャーミングな女性ですね。精密な観察をもとに描かれた画面は、磨き上げられたような完璧な仕上げです。しかし、モデルの身体はどこか奇妙ではありませんか。たとえば、右腕が腹部から出ているように見えないでしょうか?
‣人体描写の同じような「変形」は、アングルの他の作品にも見つかりますよ。ここで探してみてください。授業でも、まずは受講生に観察してもらうことから始めています。
‣このような「変形」を、「デフォルマシオン」といいます。もちろん、人体の表現を適度にアレンジすることは珍しいことではありませんが、アングルの場合はやや度を越していて、明らかにひとつの特質になっています。そしてこの特質は、古代美術というお手本からは説明できません。では何が背景にあるのか?ということを考えていくわけです。答えはひとつとは限りません。どの方向に可能性を探るかは、あなたの観察力と知識とひらめき次第です。そこには、自由な創造性があります。
‣美術史の学びは、観察によって発見すること、それについて考えることで成り立っています。単なる名作鑑賞ではなく、暗記科目でもない、ということがお分かりいただけましたか?

こんなかたがたをお待ちしています

‣美術作品をはじめ、「目で見る文化・作品」について深く知りたい・感性を磨きたい。

‣美術館や文化施設に触れながら主体的に学びたい・できればそうした場所で将来活躍したい。

‣文化財や文化遺産に興味があり、もっと深く知りたい。

‣文学部の4年間で、なにか専門と言える知識や考え方を身につけたい。

一般的な美術史専攻との違い

‣大学院でさらに学んだり、専門職を目指す上では、西洋語の能力が大切です。しかし、普通は西洋美術史を専攻する場合も、外国語の選択と学修は個々の学生に任されています。外国語を一人でマスターするのは容易ではありませんし、時間もかかります。
 このコースは一般的な美術史専攻とは違ってフランス語の専攻内にあるため、1年次から多くの時間をかけて基礎から無理なくフランス語をしっかり学べます。その上で西洋美術史を学ぶ体制は、他の美術史専攻にはない特徴です。また語学留学のサポートが整っているのも、歴史あるフランス語専攻ならではの利点です。もちろん外国語の学修にはモチベーションが必要ですが、美術史に興味をもつことで、外国語の学修にも目的を持つことができるでしょう。

‣社会との接点を意識する:このコースでは、美術史に加えて過去と現在の美術館についても学べるよう設計されています。そのねらいは、美術史が私たちの社会の中でどう位置づけられ、どんな役割を果たしているか、ということを知ることです。つまり、西洋美術史を遠い世界の知識としてでなく、より私たちに身近な、生きた存在として理解することをめざしています。そこから、学んだことを社会でどう生かすか、という楽しい将来設計も可能になると考えています。
 いわゆる「実学」だけが、大学の学びを生かす道ではありません。同時に、研究職に就くことがだけが専門を生かす道でもありません。とくにアートという専門は、広く実社会で生かすことができるものです。

‣楽しく知的に学んだ体験がその後の人生へとつながっていくのが、文学部の学修の理想形だと考えています。このコースは、そうした目標のもとに運営されています。

学ぶスタイル

ヴィジュアル・エデュケーション:美術史を学ぶ上では、知識や用語を身につけると同時に目で見て判断できることが大切です。講義、演習ではスライドを使用し、見学で実際の作品にも触れながら、本だけでは身につかない美術史の基本を学びます。この専門的な観察法は、知識と違って一生忘れません。

特化された設備:講義室と演習室には、スクリーン上のスライド画像を最適の状態で観察できる特殊なLED照明が装備されています。

フィールドワーク:特に美術館について学ぶには、実地に出向くことが大切です。演習、ゼミでは実地見学を交えて学修を進めます。見学先では、学芸員など専門家のお話をいただきます。またゼミでは夏季見学旅行(阿部ゼミ)や合宿(泉ゼミ)も行います。

ディスカッションと発表:勝ち負けのためではなく、参加者の誰もが収穫を得るためにあるのがディスカッションです。演習、ゼミではディスカッションとスライドを使った口頭発表を通じてアイディアを出し合い、考えを深め、役割を果たして何かを作り上げる楽しさを知ります。詳しくは「ゼミ紹介」のページをご覧ください。

△アーティゾン美術館にて

学修のストーリー

ステップアップします:大学で初めて学ぶ分野ですから、最初は誰もが初心者です。予備知識なしから出発して自分独自の収穫まで、段階を追って学修できるようになっています。なお1年次は専攻共通のカリキュラムで学びながら、「語学文学文化コース」と「美術史美術館コース」のどちらを選ぶかじっくり考えることができます。また2年次末、3年時末にコース変更手続きも取れます。

1年次:紹介  >>> 「フランス美術史」      
2年次:入門  >>> 「美術史概論」「美術史各論」「美術史美靴館入門演習」
3年次:応用  >>> 「美術史各論」「美術史美術館演習」「美術史美術館専門演習(ゼミ)」
4年次:収穫  >>> 「美術史美術館専門演習(ゼミ)」「卒業論文」
▲学修のステップアップ

系統づけられています:知識を身につけ考え方を学ぶ講義系科目と、それを元に自分で応用する演習系科目とが、それぞれ道筋をなしてつながっています。「美術史各論」は5種のテーマ別に開講され、2年から4年の間に関心に応じて選択します。美術史・美術館以外にモードや建築の授業もあります。

アレンジできます:同じことばかりを単調に学ぶわけではありません。美術史・美術館の学修と並行して、語学文学文化コースの各科目を履修してフランス語を磨き映画などフランス文化に触れることができるほか、文学部で開講されている歴史、哲学、社会、心理、教育など多彩な分野の開講科目を興味に合わせて履修できます。

授業科目の内容:美術史入門、美術館探検、フランスのモード、現代建築、イタリア・ルネサンス、etc., etc... 

《1年次》

‣「フランス美術史」(阿部成樹):初心者向けに、美術史という分野の紹介を兼ねた講義です。単に歴史をたどるのではなく、選ばれた作品を受講生皆でじっくり見て、絵の中に自分で何かを発見する授業です。あなたの「美術鑑賞」を根本から変えることが目的です。コース選びの参考になります。語学力、予備知識、西洋史の知識などは一切必要ありません。すべてお任せを。

‣「西洋美術史」(永井裕子):古代から近代までの西洋美術の歴史を、スライドを見ながらスピード感をもって学ぶ人気講義です。

‣「仏文基礎演習」:週2回の授業で、フランス語を基礎から学びます。その他、フランス人による授業もあります。

‣他にフランス文学史やフランス文化史、そして他の語学や他専攻の科目まで、興味に合わせて履修します。

《2年次》 *いずれも2年次必修

‣「美術史概論A」(阿部成樹):

「美術」と「工芸」とはどう違うのか、いつ別れたのか。言語ではなく「かたち」でものを考えるとはどういうことなのか。「美術史」という学問はいつ始まったのか。美術史は社会とどんな関係にあるのか。美学など隣り合う分野にも触れながら、美術史という学問のABCを初歩から解説します。いわゆる「美術作品」のかたちばかりではなく、生き物のかたちと進化、地形、焼き物など工芸品のかたち、写真、建築などいろいろな寄り道をして、「美術史」を学ぶ発想を柔軟にします。

‣「美術史概論B」(泉美知子):

この講義では、西洋美術史の各時代が、これまでどのように論じられてきたかを紹介します。
 西洋美術の歴史は、最初から決まっているわけではありません。各時代の関心に基づいて「発見」され、今もその姿を刻々と変えています。ある時代には軽んじられていた作家や潮流が、別の時代には再評価されたり、異なる意味を与えられたりすることもままあります。
 各時代の美術史を作り上げた人々とその著作を取り上げ、その内容を初学者向けに噛み砕いて紹介します。 取り上げる著作は原則として邦訳のあるものを優先し、講義後にみずから触れて学修を深められることを意図しています。

‣「美術史美術館入門演習(1)」(阿部成樹):

美術館に行っても、肝心の作品を見るより解説を読む時間が長くないですか。美術を知識で見ようとしても、その面白さは一過性です。なぜなら、作品を自分で見ていないからです。といって、何の準備もなく自分勝手に見ようとしても、あなたの世界は広がらないでしょう。
 美術作品を自分で深く観察するには、知識ではなくコツ(技法)が必要です。そしてそのコツは、特別な感性がなくてもつかめるのです。どこをどう見れば楽しめるのか、それをどう言葉に表すのかを、実際にやってみて学びます。
 また、自らの関心に基づいてひとりの美術家(デザイナーや建築家、写真家、映画監督etc.でも構いません)を選び、経歴や作品を紹介する発表も行います。研究発表の基礎を学びます。

‣「美術史美術館入門演習(2)」(泉美知子):

美術館の歴史や文化財保護にまつわるさまざまな問題を、発表も交えて掘り下げます。素材として、映画やマンガもとりあげます。前期は、美術館の様々な仕事、作品の保存・修復、展覧会企画、今日の課題といったトピックを通して、美術館とはどういう場で、社会のなかでどのような役割を果たしているのかについて全般的な知識を学びます。美術館の裏側を描いたドキュメンタリー映画、ルーヴル美術館企画のバンド・デシネ(フランス語でマンガのこと)を使いながら、グループ・ワークとディスカッションをすることで理解を深めます。後期は、近代社会における美術館制度の出発点となった大英博物館、ルーヴル美術館を取り上げ、その成立の歴史、基本理念について学びます。そのうえで、世界および日本のなかから興味のある美術館をひとつ選び、設立とコレクションについての個人発表を通して、美術館についての考察に取り組みます。 
 前期の授業では、美術館が意味や価値を生み出すクリエイティヴな場所であることを知ってほしいと思います。みなさんがこの授業のあと美術館を訪れたとき、ただ作品を鑑賞するだけではなく、美術館という対象を様々な角度からクリティカルに観察できる眼を養うことを目標とします。
 後期の授業では、美術館という制度が、ヨーロッパの歴史のなかでどのように成立し、近代社会のなかでその理念がどのように育まれてきたのかについて学びます。そして美術館という対象を歴史的な視点でとらえる方法を修得し、個人発表で実践します。 
 こちらの授業紹介をどうぞ。

《2-3-4年次》

‣「美術史美術館演習」(岩瀬慧兼任講師/三菱一号館美術館学芸員):3年次必修

美術館を巡るアクチュアルな課題を現役の学芸員が取り上げ、受講生自身による研究と発表で深めます。もちろん美術館見学も行います。
 「美術」とは何かを、明確に定義できる人はほとんどいません。そのような曖昧な「美術」を社会に向けて公にプレゼンテーションする制度として、「美術館」が存在します。こう考えた時に、美術館は商業施設とは異なる課題に直面していることが推測できます。
 この演習では、美術館の直面する多様な課題を、参加者のみなさんと一緒に読み解き、考察することを目的としています。対象となる美術館は、私たちにとって身近な日本の美術館と、比較対象としてのフランス、アメリカ等欧米を中心とした西洋美術館が中心となります。
 前期は、美術館のケース・スタディです。各々の美術館が置かれている立場は決して一様ではありません。美術館ごとにどんな課題に取り組んでいるかをひとつひとつ確かめ、ディスカッションを通して批評します。毎回ひとつの美術館を取り上げ、①開館に至る経緯や歴史、②コレクションや展覧会、③現在の主な活動と④今後の方向性を担当者に報告してもらいます。 後期は、美術館を取り巻くさまざまな課題を取り上げていきます。こちらも毎回担当者の事例報告に教員が肉付けをし、それを元に全員で議論します。フィールドワークも行います。
 美術館の活動を、日々変貌していくアートとそれを取り巻く社会状況との関わりの中でとらえることがこの授業の第一の目標です。 さらに、それを他人事としてではなく、私たちの社会の中で美術館が何であるべきか主体的に考察し、どんな役割を果たすべきかを言葉にし、説明する姿勢を身につけたいと思います。
 【キーワード】国立西洋美術館、ポーラ美術館、マルモッタン・モネ美術館、大原美術館、アーティゾン美術館、オルセー美術館、国立新美術館、ポンピドゥー・センター、パリ市立近代美術館、ボストン美術館、ウィーン美術史美術館、金沢21世紀美術館、美術館と政治、美術館と企業活動、美術館と美術市場、美術館とメディア、美術館と地域・教育普及・福祉、美術館と保存修復、美術館と環境、美術館と災害

‣「美術史各論(1)」(泉美知子):2−4年次の間に選択履修:

美術館、文化財保護思想の歴史を、具体的にたどっていく講義。この分野の専門的な講義は、他大学にはほとんどありません。
 2021年度は芸術と芸術家の保護者である「パトロン」について取り上げます。パトロンとは、「単に芸術作品の経済的、物質的担い手というだけでなく、芸術家を理解し、作品を評価して芸術家に支援を与える人びと」(高階秀爾『芸術のパトロンたち』より)のことです。画家や彫刻家はかつて今日の私たちが考えるような「芸術家」ではありませんでした。手仕事の職人が社会で認められる芸術家になるためには、パトロンの権力と財力が必要でした。一方で、パトロンが作品を依頼し、芸術家を支える行為には、どのような思想や戦略があったのでしょうか。ヨーロッパを代表する美術館コレクションの基礎を築いたパトロンたちについて学びます。作品そのものだけでなく、芸術家の活動を支えたパトロンに視野を広げることで、芸術と社会の関係について理解を深めることが、この授業の目標です。
 王侯貴族や教会の勢力が弱まり、大パトロンの役割を果たしていた時代が終わりを告げると、近代社会において芸術活動の担い手は市民へと移っていきます。芸術家と市民を結びつけるのが展覧会であり、芸術家が作品をアピールする重要な場となります。しかし一般の市民は、王侯貴族や聖職者のように芸術について知識があるわけではありません。彼らが作品の評価において頼りにするのは、美術の権威や美術批評です。美術アカデミーのお墨付きや、新聞や雑誌で発表される美術批評は、芸術家にとって作品が売れるかどうかに関わってくるのです。この授業では、前期の続きとして、市民のパトロンから始め、美術アカデミーという組織、美術アカデミーが主催するサロン(官展)、印象派のグループ展の美術批評を取り上げ、市民がパトロンになっていく時代の美術について考えます。美術アカデミーという制度や美術批評から西洋美術史をとらえることで、芸術作品がどのように評価されてきたのかについて理解を深めることを目指します。
【キーワード】メディチ家、ローマ教皇、フランソワ1世、ハプスブルク家、サロン批評、印象派展
こちらの授業紹介をどうぞ。

‣「美術史各論(2)A」(朝倉三枝兼任講師/フェリス女学院大学准教授):2−4年次の間に選択履修
 ヨーロッパの芸術文化の特質を「ファッションとアート」という観点から学びます。ヨーロッパ諸国で前衛的な芸術運動が次々に台頭した19世紀末から20世紀初頭の時代を中心に、衣服造形に及んだ同時代の芸術運動の影響や、ファッションデザイナーと芸術家のコラボレーション、さらに芸術家による衣服制作など、さまざまな事例を通して、芸術との結びつきがどのように創造的なファッションを生み出したのか、また新しい衣服造形がいかにして人びとのライフスタイルや身体観を変容させていったかを検討します。
 授業では、衣服をはじめ、絵画、文学、舞台、建築、工芸、写真など、さまざまなジャンルの作品鑑賞と分析を行い、近現代の西洋美術と服飾に関する基礎的な知識の習得を目指します。それと同時に、ファッションを手がかりに、私たちを取り巻く社会や、そこに現れた文化的事象を読み解く複合的な視点を培うことも目標とします。
【キーワード】ジャポニスム、クリムト、バレエ・リュス、アール・デコ、ポール・ポワレ。ソニア・ドローネー、藤田嗣治、ジャン・デュナン、スキャパレリ、ダリ

‣「美術史各論(2)B」(永井裕子兼任講師/日本女子大学助教):2−4年次の間に選択履修
 フランスとイタリアのルネサンス期美術について、専門的に学びます。
 イタリア・ルネサンスの主要な芸術家と作品を学びながら、この時代の美術の流れを概観します。複雑な発展を遂げたルネサンス美術ですが、この授業ではルネサンス黎明期、初期ルネサンス、盛期ルネサンス、ヴェネツィア派を軸として芸術の展開を見ていきます。授業では数多くの図版や映像資料を使いますが、それぞれの作品の特徴を考えながら見ることが大切です。イタリア・ルネサンス美術全般に関する知識を身につけ、この時代の芸術がなぜ重要なのか理解することを目的とします。また、ルネサンス美術作品を目の前にした際、単なる鑑賞に留まらない分析力を身につけることを目指します。

‣「美術史各論(3)」(和田菜穂子兼任講師/東京アクセスポイント代表/慶應義塾大学非常勤講師):2−4年次の間に選択履修
 現代建築(特に北欧)の研究と解説、見学活動に豊富な経験を持つ専門家が、フランスおよび西洋の建築史・現代建築を取り上げます。
 芸術と建築の関連性をテーマに、前期の授業では19世紀末から20世紀に至る日本および欧米における近代建築の動向について学びます。とりわけ20世紀に入ると新しい時代の幕開けとともにヨーロッパ各国ではさまざまな芸術運動が興り、それに建築家も大きく寄与します。それぞれの国の建築史を背景に、建築意匠論、都市論、空間論、建築家論を展開します。また、日本と関わりのある建築家を取り上げ、近代日本の建築界に及ぼした影響を検証します。建築家たちが挑んだ革新的な取り組みや、その時代背景にある社会、文化、思想等との関連性を浮き彫りにします。
 後期は、日本および欧米における近現代建築の基礎を学びます。近年、ようやく20世紀以降に建てられた建築も建築遺産として認められる動きが出てきました。しかし依然として我が国では秀逸な近代建築が正当に評価されないまま、取り壊しの危機に瀕しています。本講義では近代建築遺産としてすでに評価されている代表的な建築を取り上げ、その歴史的価値を学び、現代における建築の保存活用に対する見識を養いたいと思います。
 授業はスライドやDVDを用いた講義形式を基本としますが、学生によるプレゼンテーション等を盛り込み、インタラクティブな授業形態を試みます。近代建築の基礎を習得し、建築に対する論理的思考力を養い、自分自身の言葉で語る表現力を身に着けることを目的とします。
【キーワード】ウィリアム・モリス、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、ガウディ、バウハウス、ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライト、アルヴァ・アアルト、アルネ・ヤコブセン、谷口吉郎、谷口吉生、黒川紀章、隈研吾、伊東豊雄、坂茂、SANAA

‣「美術史各論(4)」:2−4年次の間に選択履修
 2022年度新規開講科目です。阿部成樹により担当の予定です。

‣「美術史美術館専門演習(ゼミ)」(阿部成樹、泉美知子):3−4年次必修
 2種類のゼミからひとつを選び、3−4年次の2年間履修します。
 美術史と美術館について、関心を同じくするゼミ生、教員とともに2年間を過ごし、議論、発表、見学、卒論を通じて成長します。お食事会や見学旅行、合宿といった行事もあります。
 詳しくは、下記のゼミ紹介をご覧ください。
阿部ゼミ紹介
泉ゼミブログ

このほか、語学文学文化コース開設の語学・文学関連科目を履修して、フランス語を磨き、文学に親しむこともできます。

留学

‣美術史という専門を持つことで、単なる語学留学では味わえない、一段上の留学体験ができます。
‣欧米の大学・研究機関へ留学することによって、実際の作品に触れ、豊富な資料を用いて美術史を研究することができます。とりわけ専門職を目指す場合は、留学は大きな武器になります。
‣中央大学は、パリ大学(旧パリ・ディドロ大学ほかを統合したもの)、パリ・ナンテール大学、トゥールーズ大学、リヨン大学エクス=マルセイユ大学ジュネーヴ大学などと交換留学協定を結んでいます。協定先以外の大学に留学することも、もちろん可能です。また留学を援助するための奨学金制度も用意されています。
‣留学先で修得した単位を本学の単位として認定する制度があります。これにより、同級生と同じ春に卒業することが可能です。
‣このサイトの「リンク」のページで、フランス語または英語で美術史や美術に関する研究ができる主な大学をあげています。

学芸員資格課程

‣美術史美術館コースの学びに加えて、学芸員資格を取得することで、卒業後の進路に大きな可能性を付け加えることができます。
‣学芸員資格は歴史の長い国家資格です。学芸員として美術館・博物館に採用される際に必要です。同時に、美術史や美術館についての専門知識の証明書として役立てることもできます。企業が展開する各種の展示施設や広報、旅行や観光に関わる職種など、その使い道は幅広く存在します。
‣資格課程の授業は、学外の実務家または実務経験者により担当されます。また学外の美術館での実習(「館園実習」)も含まれます。いずれも学内の他の授業科目とは違う経験ができます。
‣美術史美術館コースのカリキュラムは、一部学芸員資格課程と共通化されているので、負担が軽くなっています。詳しくはこのサイトの「学芸員資格」のページをご覧ください。
‣学芸員課程は、希望者のみの履修です。履修しなくても、卒業にはまったく支障はありません。教職課程など、他の資格課程を受講するコース生もいます。

国立美術館キャンパスメンバーズ

‣中央大学文学部は「国立美術館キャンパスメンバーズ」に加入しており、学生証提示によって下記の3美術館に優待入館できます(一般の学生料金よりもさらに優待されます)。あなたの学生証が、そのまま優待券になります。コースではこの制度を利用して見学を行うほか、自主的な見学にももちろん利用できます。利用回数に制限はありません。なお授業の見学先がこの3館に限られるわけではありません。
国立西洋美術館
東京国立近代美術館
国立新美術館
国立美術館キャンパスメンバーズ

入試・定員等

‣入試は専攻で一括して行われます。コース別の試験はありません。
‣コース別の定員等はありません。コースには、1年次末の希望調査に基づいて2年次から配属されます。
‣特に美術史・美術館に関心の高い人向けに、自己推薦入試(通称「美術館体験入試」)が行われています。あなたの美術館体験を評価します。
‣くわしくは、「入試」のページをご覧ください。

進路

‣社会に飛び立つ:美術の教養への社会的関心と評価には、高いものがあります。その教養は、美術館・博物館以外にも、展示施設の企画・制作・運営(例:丹青社乃村工藝社)、図書館司書、広告、旅行・観光、建築・デザイン、出版、各種メディア(エディター、ライター、リサーチャーなどとして)、文化政策にかかわる各種団体・公共機関、企業のメセナ(芸術文化支援)関係部門などで生かすことが期待されます。
‣もちろん多くの卒業生が、金融や航空、製薬、自治体、アパレル、食品、ITなど多種多様な分野に進んでいます。
‣研究を深める:専門職(学芸員、教育職)につくために、大学院でさらに研究を深めて学位(修士号、博士号)をとる道もあります。大学院は特別な人が進学するところではありません。専門職業人として活躍したい人のための、「上級コース」です。詳しくは「大学院」のページをご覧ください。
「ゼミ紹介」ページ下部の「OBからのメッセージ」もご覧ください。また「卒業生」のページもご覧ください。