メトロポリタン美術館|ニューヨーク

学芸員(キュレーター)は、博物館法で博物館・美術館に配置するよう定められた専門職員です。
研究職と教育職を兼ねた立場で、文化と人の仲立ちをします。

学芸員とは

‣学芸員(キュレーター)は、博物館法で博物館・美術館*に配置するよう定められた専門職員です。研究職と教育職を兼ねた立場で、文化と人の仲立ちをします。*博物館法が定める登録博物館、博物館相当施設を指します。
‣美術館学芸員(キュレーター)の仕事は、作品の収集、展示、保存、調査研究から、企画展の開催、カタログ執筆、教育普及活動(教材開発、イベント開催)に至るまで多岐にわたります。作品ばかりでなく、常に人や社会と関わる活動的な仕事と言えます。特に近年では、美術の楽しさを伝える教育普及企画(ラーニング)に注目が集まっています。単なる解説を超えた、もっと積極的で面白いプログラムが生まれています。
‣大規模な美術館では、数十万人の来館者を相手にするビッグ・プロジェクトに関わることができます。一方、地域に根ざした中小規模館では、美術を仲立ちにした温かく息の長いコミュニティ作りに参画することもできます。どちらも、コースでの学びを生かしたやりがいのある仕事と言えるでしょう。

学芸員資格とは

‣学芸員資格とは、学芸員として採用されるために必要な国家資格です。
‣学芸員資格を取得するには、大学の学芸員資格課程で所定の単位を修得する必要があります。修得すれば、国家試験等を受験する必要はありません。資格は無期限に有効です。卒業時に、学芸員資格の取得を証明する「修了証書」が交付されます。
‣中央大学文学部の学芸員資格課程では、毎年30〜40人程度が課程を修了しています。
‣希望者の多い美術館に学芸員として採用されるには、大学院仏文学専攻内の美術史コースで引き続き学ぶと有利です。

学芸員資格課程の科目は、ユニークで実践的です。
平塚市美術館にて
右:講師の先生 左:実習生

‣学芸員資格課程の必修科目は、8種の講義科目とひとつの実習科目(博物館実習)に分けられます。この9科目は、国内すべての大学で共通です。
‣必修科目では、博物館の運営や資料保存、展示、博物館教育など、美術館の運営について専門的に学びます。ほとんどの講師は美術館・博物館の学芸員またはその経験者です。
‣博物館実習では、まず前期に学内で予備的に学んでから、夏休みを中心に実際の美術館・博物館で「館園実習」を受講します。館園実習では、現役の学芸員から現場で実践的に学びます。内容は、作品展示体験から来館者対応まで多岐にわたります。平均して5日間の実習ですが、多くの受講生にとって思い出になる、学芸員資格課程ならではの授業です。
‣このように学芸員資格課程の授業は、総合大学の通常のカリキュラムにはない特色と、実践的な内容を持っています。

学芸員資格課程で学ぶキュレーションの技法や展示についての知識・感性は、一般社会でも生かすことができます。
  • 美術史を学びながら学芸員資格を取得することで、美術史や美術館の知識を広く社会に生かす可能性が開けます。美術史や美術館について専門的な知見をもつことを、資格によって証明することができます。他の専攻・コースからでも資格取得は可能ですが、資格の特徴を生かすには、美術史を専門的に学ぶのが良いでしょう。
  • 美術館や展覧会に関わる職種は、学芸員以外に展示デザイン、広報、損害保険、美術品専門の運輸など幅広く存在します。これらの職について美術館や展覧会に関わるには、学芸員資格を持つことが大きな武器になると考えられます。
  • また一般に旅行・観光や建築・デザイン、広告やメディア、文化財団や公共施設などで美術(アート)の歴史に関する知識が評価されますが、そうした知識の証明書として学芸員資格を位置づけることもできます。
  • 近年、歴史ある企業グループが設立した美術館の改装・新開館が行われたり、著名な企業によるミュージアムやギャラリー、アート・センターの新設が相次いでいます。都市開発において、アートが果たす役割にもあらためて注目が集まっています。公立美術館の新設やリニューアルも続いています。
  • こうした動向の中で、美術史と美術館・ミュージアムの専門知識を保証する学芸員資格は新たな重要性をもつと考えられます。
  • 近年の主な新規開館・大規模リニューアル
美術史美術館コースおよび大学院修士課程・博士課程では、学芸員資格の取得を推奨・支援しています。

‣美術史美術館コースでは、カリキュラム中に学芸員課程の科目を一部含んでいます。つまりコース生は資格のために別途履修しなければならない科目が他の受講生より少なく、資格取得の負担が軽減されています。詳しくは次の項目をご覧ください。
‣コース必修科目の中には、現代の美術館が置かれた状況を、現役の美術館学芸員から実践的に学ぶ科目(「美術史美術館演習」)も設置されています。資格の学びとコースの学びがリンクしています。
‣学芸員資格課程の「博物館実習」では、美術館の現場で実作品に触れ、美術と社会の接点を経験することで、ふだんの学びを肉づけすることができます。
‣美美コース生の主な館園実習先は、多岐にわたります。主に都内や近県で受講しますが、出身地など地方の美術館で受講することもあります。最近の主な実習先は、以下の通りです。
東京都現代美術館、東京都写真美術館、世田谷美術館、練馬区立美術館、渋谷区立松濤美術館、府中市美術館、多摩美術大学美術館、東京富士美術館、八王子市夢美術館、村内美術館(八王子市)、町田市立国際版画美術館、神奈川県立近代美術館(鎌倉市など)、横須賀美術館、茅ヶ崎市美術館、平塚市美術館、高崎市タワー美術館、原美術館ARC、ベルナール・ビュフェ美術館(静岡県)、山梨県立美術館(甲府市)、碌山美術館(安曇野市)、大原美術館(倉敷市)、島根県立美術館(松江市)、いわき市立美術館、北海道立近代美術館(札幌市)など
‣大学院で学芸員資格を取得することもできます。本研究科仏文学専攻美術史コースでは、美術史の博士号を持つ2名の専任教員により、西洋美術史を専門として学べます。また、研究科で認められた美術館でインターンシップを受講して、実践的な訓練を積みながら単位を習得することができます。詳しくは大学院美術史コースのページをご覧ください。
‣学芸員資格課程は必修ではなく、希望者のみの履修です。課程を履修しなくても、美美コースで卒業することにまったく支障はありません。
‣司書課程、教職課程など、他の資格課程を受講することも可能で、実際に司書として働く卒業生もいます。また図書室を備える美術館では、司書の有資格者を募集することもあります。その場合は、学芸員資格と司書資格を併せて取得すると役立つでしょう。

学芸員資格の取得に必要な履修科目と単位数
2022年夏 実習風景(東京富士美術館にて)

‣学芸員資格を取得するための必要単位数は、文化庁が定める必修9科目19単位と、中央大学が設定する選択必修4科目12単位の、合計13科目31単位です。これを、2年次から4年次の間に履修します。多くの場合、3年次末までに完了できます。
‣必修科目のうち5科目10単位は、卒業のための単位に含めることができます。また美美コース生の場合、選択必修科目すべてを卒業単位に含めることが可能です。そのため、卒業とは別に追加で履修しなければならない科目は、4科目(9単位)です。
‣選択必修4科目のうち2科目は、美美コースの必修科目です。美美コース生はこの2科目4単位については自動的に履修するので、あらためて選択する必要はありません(美美コース生ではない場合、この2科目については卒業単位となりません)。残りの選択必修2科目は、学部共通で開講されている「西洋美術史」「日本美術史」「日本文化史」「民俗学」などから自由に選択して履修することができます。

美術館と学芸員を知るためのブックガイド
  • 草薙奈津子美術館へ行こう』岩波ジュニア新書、2013年
    • 美術館が単に「絵が並んでいるところ」ではなく、どんなふうにワクワクさせてくれる活気ある場所なのか、平易に語る本です。
  • 滝登くらげ学芸員の観察日記 ミュージアムのうらがわ』文学通信、2023年
    • 日本美術史がご専門の現役学芸員による4コマ漫画。学芸員というお仕事、美術館の日常が面白く楽しく描かれています。考えるヒントになるコラムも魅力的。漫画はこちらでも読めます。
学芸員資格課程を受講した美美コース生の声から * ()内は卒業後の進路です。